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予備校講師×子育て

少女の日の思い出

 長女の友だち家族とBBQをする予定だったのですが、雨の可能性があったので延期となり、急遽、日帰りで山梨に行きました(朝7:00に出発し、8:30頃には現地着)。戦国時代にハマっている長女の要望に応え、今回の目的地は「武田信玄の墓」と「三条の方(=信玄の正室)の墓」です。長女が披歴する戦国豆知識(←『戦国姫』で学習)を聞きながら2つのお墓を回ります。立派なお墓ではありましたが、9時前には見終えてしまいました。 

武田信玄の墓
武田神社

 長女は満足したようでしたが、連れ回されている次女からすれば「朝早く起こされて、1時間半車で運ばれた上に、よくわからない人の墓参りをして終わった」という状況です。さすがにかわいそうなので、近くの山梨県立科学館に行きました。

便座に座って消化を学ぶ3女
巨大バブルに入る長女と次女

 ここは楽しいですね!学びと遊びがバランスよくミックスされていて、小学生であれば丸1日過ごせると思います。特に良かったのは「昆虫の標本作り体験(1000円)」でした。昆虫標本と聞き、国語教師として想起するのは、中学校の教科書掲載「少年の日の思い出」(ヘルマン・ヘッセ)です。

胸をどきどきさせながら、ぼくは誘惑にまけて、紙きれを取りのけ、ピンをぬいた。すると、四つの大きな不思議な斑点が、さし絵のよりはずっと美しく、ずっとすばらしく、ぼくを見つめた。それを見ると、この宝を手にいれたいという逆らいがたい欲望を感じて、生れてはじめて盗みをおかした。
   (略)
…大きなトビ色の厚紙の箱を取って来、それを寝台の上にのせ、やみの中で開いた。そしてチョウチョを一つ一つ取り出し、指でこなごなにおしつぶしてしまった。

「少年の日の思い出」(ヘルマン・ヘッセ/高橋健二訳/中公文庫)

 蝶を盗んだことが露見し、友人(エーミール)から軽蔑された少年は、自責の念に苛まれながら自分の蝶を一つ一つ押しつぶします。全国の中学生に何とも言えない嫌な読後感を与え続けている名作ですね。彼らがおこなっていた蝶の展翅(てんし)とはどんな作業なのか、講師として、この機会に経験しないわけにはいきません。妻は高速道路の渋滞を懸念して申し込みを躊躇していましたが、「だって本人(長女)がやりたがっているから」と説得し、娘と2人で体験しました。

 かいこがの柔らかな身体の扱いに苦労しながら細かい作業を進め、担当職員の方の講義と合わせて1時間程度で体験を終えました。展翅作業はもちろん、職員の方の生物愛溢れるお話を聞けたのも良かったです。結局、閉館時間ギリギリまで滞在し、科学館を満喫して帰路につきました。娘が中学校でヘッセの作品と出会ったとき「少女の日の思い出」として今日の日のことを思い出すのを期待しながら。